ハクキンカイロ カスタム
雪山登山やウインタースポーツは楽しいものですが、困るのは寒さ。寒さに弱く、暑いのが嫌いな研究員のような人間に冬必要となってくるのが、懐炉(カイロ)。
ただ、 普通の使い捨て懐炉では貧弱な人間を温めるのは難しい。
そこで登場するのが「ハクキンカイロ」です。
「ハクキンカイロ」とは
「ハクキンカイロ」の「ハクキン」は「白金」を指し、貴金属である「プラチナ」を意味します。
「ハクキンカイロ」 は白金触媒式と呼ばれる、化学反応によりベンジンを主な燃料とするカイロの一種です。
ベンジンなど炭化水素の燃料を、白金(プラチナ)の触媒作用により、摂氏300度 - 400度の比較的低温域で、緩やかに二酸化炭素と水へ酸化分解させ、その過程で反応熱を取り出し携帯暖房器具です。
大正末期、的場仁市がイギリスのプラチナ触媒式ライターを参考に、「プラチナ(白金)の触媒作用を利用して、気化したベンジンをゆっくりと酸化発熱させる」懐炉を独自に発明し、1923年に「ハクキンカイロ(白金懐炉)」の商品名で発売したのが起こりで、その後も同様の方式のカイロを一般的に「ハクキンカイロ」と呼ばれています。
触媒となるプラチナをマット状ガラス繊維に粒子として付着させてあり、効率的に反応が進行する。ベンジン1cc当り約11,500cal(≒48,116J)と、使い捨てカイロの約13倍の熱量を持ちながら、機種により差はあるがおよそ燃料1ccで、表面温度60度の状態を約1 - 2時間保持可能。
反応開始時、130度以上の触媒加熱が必要で、炎または電熱線を用いた加熱が一般的です。
現在、日本国内メーカー製造・販売のベンジンを燃料とする白金触媒式カイロは、ハクキンカイロ株式会社が販売する「ハクキンカイロ」を筆頭に、マルカイコーポレーションが販売するジッポーブランドの「ハンディウォーマー」及びマルカイオリジナルブランドの「ハンディウォーマーミニ」、 川崎精機製作所「KAWASAKIポケットウォーマー」 等の類似品が存在します。
ジッポーブランド製品はハクキン社OEM品だと考えられています。
「ハクキンカイロ」 の魅力
デザイン
日常生活でハクキンカイロの最大の魅力は使い捨てカイロよりデザインが断然良いこと、重量当たりの単価が違いすぎますが、ピカピカの真鍮製の本体からは自然にいいモノ感が漂ってきます。
繰り返し使用可能
ハクキンカイロの本体は心中でできており、定期的に交換が必要な燃料を蓄えておくための脱脂綿や発熱を行う火口の定期的な交換は必要ですが、消費する燃料以外は繰り返し使用でき、使用の度に廃棄物を発生させる使い捨てカイロに比べて罪悪感を覚えなくてもいいのはうれしいところです。
敢えて言えば、カイロを収めておくフリース製のケースが化学繊維でできているくらいですが、もちろん洗濯して繰り返し使用可能です。
熱量が大きい
使い捨てカイロの約13倍の熱量とも言われる発熱力を誇り、寒い環境であれば何より頼りになる存在です。
寒い環境で停滞を余儀なくされ、筋肉での熱生成が難しい状況では持っていてよかったと実感する機会は少ないです。
山などのフィールドだけでなく、冬のスポーツ観戦などにも有効です。
長時間稼働
公称では、一回の燃料補充で最大24時間の発熱反応継続が可能とのことで、使用開始直後より時間当たりの生成熱量が減少していき、長くて6時間ほどしか有効使用時間がない使い捨てカイロと比べるとはるかに長時間稼働してくれます。
「ハクキンカイロ」 の短所
使い捨てカイロより熱量を発揮するハクキンカイロですが、少なくない短所も持っています。
決して高くはないのですが、知らずに使い始めると無用の置物と化してしまうので、導入には自身の生活スタイルに合っているか、検討は必要だと思います。
主たる短所は以下の通り
燃料を必要とする
ハクキンカイロ最大の短所は発熱反応に燃料を必要とする点です。
使用毎に燃料の補充を必要とし、意外にこれが手間に感じられます。
燃料となるベンジンなどは揮発性の可燃物質であるため、保管には一定の注意が必要です。
航空機内持ち込みは法令による禁止行為に該当します。
また、JRについては燃料を充填したカイロの持ち込みは規定量までは可能ですが、燃料単体は2015年6月30日に発生した東海道新幹線での放火事件を受け、2016年4月28日より持ち込み禁止となりました。
高温になる
これは長所でもあるのですが、ハクキンカイロは思いの外発熱します。
局所的な反応温度が使い捨てカイロより高いこともその一つの要因なのですが、カイロ自体が温まれば温まるほどに燃料の気化が促進され、より発熱量も大きくなります。
化学反応なので当たり前ではあるのですが、周囲が暖かいほど性能を発揮するという困った性質があるため、少々の発熱でいいときに限って触れないぐらいチンチンに発熱します。
触れなくなるぐらい発熱してしまうと、化学反応を中断させるのも一苦労です。
反応開始のきっかけが必要
白金触媒式では化学反応の開始の際に、「火口(ホグチ)」と呼ばれる触媒に対して一定量以上のエネルギー投入が求められます。
大体の場合は、ライターで一瞬あぶるだけなのですが 、ライターを普段持ち歩かない人間にしてみれば持ち物が増えます。
また、火気厳禁の場所や室内ではハクキンカイロの使用開始は難しいです。
研究員の「ハクキンカイロ」 カスタムプラン
研究員の考えたカスタムプランは機械的な加工を必要とせずに、簡単にハクキンカイロの良さを最大限伸ばしてやろうという思想で以下の3点を軸にカスタムプランを考えました
より安定的に
ハクキンカイロを使い始めて気が付くことですが、少し不安定に感じることがあります。
考えられる理由はいくつかありますが、燃料吸収体である脱脂綿が本体内で動き回って燃料が気化する空間が押しつぶさしまい、安定的に触媒に燃料が供給されなくなるためと考え対策を行います。
また、フタがタンクから外れやすいのも問題です。
蓋が外れると同時に火口もタンクからずれてしまい、継続的な化学反応が止まることがあります。
フタのの口とタンクの外周の遊びを軽減することで、しっかりとフタをタンクに固定します。
より暖かく
安定性ともつながる話なのですが、燃料を継続的に触媒へ投入しないとハクキンカイロが蓄熱している熱量が下がってしまい、燃料が安定して気化していきません。
そこでフタと本体の隙間をアルミテープで埋めることで密着させて、温まったフタの熱を本体に返してやります。
ただし、フタが予想以上に冷めてしまうと本体も冷却されてしまい、燃料の気化が止まる可能性もあり得ますので、運用には注意が必要です。
より長く
暖かさを長く保ちたいのであれば、考え方は簡単です。
大量の燃料を用意すればいいわけです。
そのためには標準より多めの燃料を蓄えるための脱脂綿の収容量を増やします。
その他のカスタムプラン
今回は行いませんが、世の中には以下のようなカスタムプランも存在します。
- 火口の触媒量を増やし発熱量を増やす
- 火口を加工し、より効率的に空気との反応させることで発熱量を増やす
- 蓋を加工してカイロに取り込む空気を増やし、発熱量を増やす
人によっていろいろと試行錯誤して、独自の工夫やその人に合った仕様にカスタムしていけるのもハクキンカイロの魅力です。
「ハクキンカイロ」 カスタム
ここからは研究員のカイロのカスタムの様子を写真とともに紹介
このページの題名に「ハクキンカイロ」と表記していますが、研究員はジッポーブランドの「ハンディウォーマー」 を愛用しています。
理由はデザインが本家より好きだからなのですが、性能的には本家の蓋のデザインの方が性能が上だと主張される方を散見するに、 ジッポーブランドの「ハンディウォーマー」 は長い歴史により洗練されてきた実用品である「ハクキンカイロ」に比べれば、所詮ファッションアイテムなのかもしれません。
準備するもの
1.ハクキンカイロ
これがないことには何も始まりません。
裏切り者の研究員はジッポーブランドの「ハンディウォーマー」
2.火口
火口は消耗品です。
ある程度使っていくと触媒としての機能が低下してきます。
また、使用開始時に熱を与えすぎるとダメージを負うことがあります。
完全に主観の問題ですが、反応が弱くなった思った時が変え時です。よほど緯度が高くない場合、それでも1シーズンくらいは優に使えると思います
3.脱脂綿
薬局などで売っている何の変哲もない脱脂綿で問題ないと思います。
4.アルミテープ
綿ではなく脱脂綿の方が燃料を保持するのに向いていますし、成形されているのでカイロに詰めやすいです。
ホームセンターなどで売っているアルミダクトテープ。
あまり厚かったり、可燃性の裏地が付いているものは適しません。
研究員は車のアルミチューン用に購入したアルミテープを流用しています。
5.目が極めて荒いスポンジ
100均一ショップで売られている多孔質と飛ぶにもスカスカすぎるほど目が粗いスポンジ
目が粗くて、硬質であり弾力性の高いモノほど適しています
6.ピカール
完全に研究員の趣味、カイロを綺麗に磨くための魔法の研磨剤。
使う際には有機溶剤特有が漂うので、共用スペースでの使用は推奨できません。
学生時代や職場でお世話になったという人も少なくないはずです。
7.ウエス又はキッチンペーパー
作業での汚れなどを防止するするため、作業台での作業をお勧めしますが、作業台などないという人はウエスやキッチンペーパーでも代用できます。
ハクキンカイロが大きくないため、キッチンペーパーでも十分に役立ちます。
清掃
半年以上ご無沙汰だったハクキンカイロを、荒れ果てた住居の中から発掘してきます。
カイロ自体を収めておくケースも問題なく使用できそうです。
ケースは仕舞いっ放しだったため埃が多く付着しており、洗濯機行と相成りました。
構成部品を全てバラして外観に問題がないことを確認します。
上からフタ・火口・本体の構成です。
特に火口は繊細なので、一旦安全な場所に置いておきます。
これまで使用していたハクキンカイロから古い脱脂綿を本体から取り出します。
先の細いピンセットなどを使い、無理やりでも全て取り出します。
燃料を浸み込ませて使っていたため所々変質していることが、目視でも確認できます
本体とフタを軽く水洗いしてしたら、ピカールで磨きます。
別にピカールで磨く必要性はありませんが、気分の問題です。
写真のピカールの使用料は明らかに多いです。こんなに使用しなくても問題なく磨けます。
あまり力を掛けすぎると板金製品のカイロの部品が変形するため、優しく圧力を加えます。
ピカールをスポンジになじませながら本体とフタを磨きます。
磨く際は机に最低限キッチンペーパーやウエスを敷いて保護することを推奨します。
ピカールに含まれる有機溶剤などで机の塗装面がダメージを負うのを防いでください。
ピカールを水で洗い流し、全体を拭いて乾かします。
ピカールで磨いた効果があったと信じたいです。
フタの勘合強度向上
まずフタの内側にアルミテープを張って勘合をしっかりさせます。
ハクキンカイロのフタは製造上の問題からか、短辺方向に公差が大きく、変形しやすいために本体に組付けた際に、密着せず遊びが大きいように感じていました。
この大きな遊びをアルミテープで埋めてあげることで、本体に密着してフタが外れるなどのトラブルを減らすと同時に、ハクキンカイロで生成した熱をフタから本体に効率的に伝えることによる燃料の気化促進を狙います。
脱脂綿交換
次に洗浄時に取り出した脱脂綿を新しいものに詰め替えます。
ハクキンカイロ本体の口が小さいため、脱脂綿は大きいモノを詰めるのではなく、あらかじめカットした小さなブロックを詰める方が簡単です。
研究員はハクキンカイロ内で燃料が気化する空間を大きく確実に確保することを目的に、気化するための専用の空間を目の極めて粗いスポンジを入れることで確保する仕様としています。
ハクキンカイロが激しく揺さぶられる際に、脱脂綿がハクキンカイロ内で大きく偏り燃料が気化するのを阻害するのを防ぐ狙いです。
内部の配置はこのようになっています。
脱脂綿とスポンジの大きさを調整しながら口から押し込むという、ハクキンカイロと格闘すること10分。
ついにハクキンカイロ本体の改良を終了しました。
目の粗いスポンジは本体の口に近づきすぎないように注意が必要です。
火口の生成する熱で溶けたり、有害物質が発生することは避けたいです。
組み立て・完成
ハクキンカイロに火口を取り付け、実際に使う日に備えます。
本格的に寒くなってきたら効果があるのか近所の散歩など厳しくない環境でテストする予定です。
定量的なテストはできないでしょうが、実用上問題なく機能すれば自己満足に過ぎませんが、それで大満足です。
以上、研究員のハクキンカイロカスタムでした。
構造が単純なので、いろいろな工夫で使用状況に合うように使いやすくすることが可能なのもハクキンカイロの魅力です。
手はかかりますが、それだけに愛着が生まれる道具です。